元カーデザイナー 星野隆三氏

 

 カローラ、ハイエース、エスティマなどの企画・デザインを担当した星野隆三さんは、クリスチャンのカーデザイナーである。人気のワゴン車エスティマは、バラバラになったアメリカの家族を一台に乗せようというコンセプトで造られ、生命力を表す卵型のデザインは多くのユーザーの心を捕らえた。動くものが好きだった星野さんは、千葉大学大学院の工業意匠学科を修了後、1967 年トヨタ自動車にカーデザイナーとして入社、そこは自らの作品が製品化され、充実感を味わえるはずの職場だった。エスティマの他に、ソアラ、マークII などヒット商品を生み出してきたが、「仕事」はできて当たり前の世界、生き甲斐を仕事だけに見出すことはできなかった。大学時代から「生き甲斐」を求めて、座禅を組んだりもした。友人に誘われキリスト教会も訪れた。「でも、クリスチャンは謙遜で立派と思っても、自分には無理だ」と、その時は4 ヶ月で教会へ行くのをやめてしまう。
 その頃、星野さんの唯一の夢は、海外留学で、それに備えるために宣教師から英語を習い始めた。英語の勉強のために、聖書を読むことで、自分の罪を知らされるようになった。「人のためにやっているわけではないのに感謝されたりすると、自分は存在していてもいいのかと感じ始め、聖書が語る『イエス・キリストに生かされている恵み』がだんだんと実感できるようになったのです」と星野さんの当時の心境を語る。そして、ある聖書キャンプで、「自分が神に生かされ愛されている存在であり、自分の罪のためにイエス・キリストが十字架にかかられ、三日目に復活した」というメッセージを聞く。「これを受け入れられなければ、永遠の命、真に価値のある人生は分からない」、そう感じた星野さんは、1973 年のイースターに洗礼を受け、クリスチャンとなる。
 世界を造られた神様に自分の人生設計、ライフデザインをゆだねた時から、確かな希望に満ちた歩みが始まった。創造者である神に立ち帰った時、「仕事」そのものの意味が変わったのだ。「かつて、芸術は神を賛美するために存在しました。けれど、ルネッサンス以後、神を捨てて人間中心になった。それが混乱をもたらしたのです。人間は神に造られたのですから、人間の創造行為は神の賜物なのです。創造活動にありがちな自己主張や独断を捨てて、神からいただいた賜物を、神が用いて下さるように祈り、自分自身を主にゆだねる時、最も良い表現ができると思うのです」と星野さんは言う。1987 年には東京造形大学の教授へと転身、デザインを経営戦略に結びつけることを教えながら、大学の研究室では、「聖書を読む会」を開催、創造性の基礎にはキリストの愛があり、信仰をもって芸術に携わる大切さを学生たちに伝えてきた。
 「知識の時代は終わり、創造の時代を迎えようとしています。それは知恵の段階でもあります。そして、知恵は人間からではなく、神から来るのです」と星野さんは語る。かつては、生き甲斐を見出すことが困難だった星野さんである。しかし、信仰を持ってからは、大学教授として、能力至上主義ではなく、神から知恵が与えられることが大切だと学生たちを励まし、育てることが生き甲斐となったのだった。

 
  
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